【鍼灸師監修】妊娠中のマッサージでダメな場所と安全な押し方を解説

妊娠中の体の不調をマッサージで和らげたいけれど、お腹の赤ちゃんへの影響が心配、という妊婦さんも多いのではないでしょうか。
この記事を読めば、自分やパートナーによるセルフケア、またはプロの施術を受ける際に、「刺激を避けるべき部位(禁忌部位)」と「安全なマッサージ方法」を明確に理解し、安心して不調をケアできる状態になります。
この記事でわかること
・ 妊娠中に絶対に刺激してはいけない部位とツボ
・ 症状別に自宅で安全に行えるセルフケアの方法
・ 禁忌の場所を誤って押してしまった際の具体的な対処法
・ 安心して施術を任せられるマタニティマッサージ店の選び方
まず確認!妊娠中にマッサージしてはいけない4つの危険な場所
妊娠中のマッサージは、むくみや腰痛などの不快な症状を和らげる助けになりますが、母体と胎児の安全を最優先に考える必要があります。
特に刺激を避けるべき「禁忌部位」が存在するため、セルフケアや施術を受ける際には細心の注意が求められます。
具体的には、お腹周り、腰やお尻への強すぎる刺激、そして特定のツボがある足首や肩、手などが挙げられます。
お腹周りへの直接的な圧迫
お腹周りへの直接的なマッサージや圧迫は、妊娠期間を通じて最も避けなければならない行為です。
子宮に直接的な刺激が加わることで、お腹の張りや痛みを引き起こしたり、場合によっては子宮収縮を誘発したりする危険性があります。
特に、お腹が大きくなる妊娠中期以降は、胎児や胎盤への物理的な圧迫が血流を妨げることにもつながりかねません。
オイルを塗る際も、優しくなでる程度に留め、圧を加えないようにしましょう。
腰やお尻への強すぎる刺激
妊娠中はホルモンの影響で骨盤周りの靭帯が緩み、腰に負担がかかりやすくなるため、腰痛に悩む方が多くいます。
しかし、腰やお尻周りへの強すぎる指圧やマッサージは、子宮の収縮につながる可能性があるため危険です。
特に仙骨(お尻の割れ目の上にある骨)周辺には子宮に関連するツボが集中しているため、専門家以外が強く刺激するのは避けるべきです。
うつ伏せでの施術はもちろん、横向きであっても腰を強く押したり叩いたりする行為は控えましょう。
子宮収縮を促す足首周りのツボ(三陰交など)
東洋医学では、特定のツボが子宮の収縮に影響を与えると考えられています。
その代表的なものが、足の内くるぶしから指4本分上にある「三陰交」です。
このツボは、婦人科系の疾患の治療にも用いられる一方で、陣痛を促す目的で刺激することもあるため、妊娠中は特に安易に押してはいけません。
また、足裏のかかと周りにも生殖器系の反射区があるため、足のマッサージをする際は、ふくらはぎを優しくさする程度に留め、足首周りや足裏を強く刺激しないように注意が必要です。
全身の血行に影響を与えやすい肩や手のツボ(合谷・肩井など)
手の甲の親指と人差し指の骨が交わる付け根にある「合谷」や、首の付け根と肩先の真ん中にある「肩井」も、妊娠中は刺激を避けるべきツボとして知られています。
これらのツボは血行を促進する作用が強く、刺激が子宮の収縮につながる可能性があるためです。
肩こりがつらい場合でも、肩井を強く押したりつまんだりせず、首から肩にかけて優しくなでたり、温かいタオルで温めたりするなどの方法でケアしましょう。
なぜダメなの?妊娠中のマッサージが母体と胎児に与える影響
妊娠中に特定の場所へのマッサージが推奨されないのには、医学的な理由があります。
ツボへの刺激がホルモンバランスに影響を与えたり、強い圧迫が血流に変化をもたらしたりすることで、母体や胎児に予期せぬリスクを生じさせる可能性があるためです。
ここでは、マッサージが与える具体的な影響について解説します。
子宮収縮を引き起こす可能性のあるツボの刺激
三陰交や合谷といった特定のツボは、刺激することで全身の血流に作用し、ホルモンバランスにも影響を与えると考えられています。
その結果、子宮の筋肉が収縮し、お腹の張りや切迫早産、場合によっては流産につながるリスクもゼロではありません。
これらのツボは陣痛促進の際に用いられることもあるほど影響力が強いため、妊娠中の安易な刺激は絶対に避けるべきです。
血圧の変動や静脈血栓症のリスクを高める過度な圧迫
妊娠中は血液量が増加し、血液が固まりやすい状態になっています。
そのため、ふくらはぎなどを強く揉むようなマッサージは、血管を傷つけたり、血栓を剥がしてしまったりする危険性があります。
この血栓が血流に乗って肺に詰まると、命に関わる肺血栓塞栓症を引き起こすリスクが高まります。
また、強い圧迫は血圧を急激に変動させる可能性もあり、母体にとって大きな負担となります。
腹部への物理的な刺激が胎児に与える危険性
お腹への直接的な圧迫は、子宮内の胎児や胎盤に物理的なダメージを与える可能性があります。
強い力が加わることで、胎盤が子宮の壁から剥がれてしまう「常位胎盤早期剥離」を引き起こす危険性も指摘されています。
これは、大量出血を伴い、母子ともに非常に危険な状態に陥る可能性がある深刻な合併症です。
そのため、お腹を強く押したり、うつ伏せになったりする行為は絶対に避けなければなりません。
【時期別】妊娠初期・中期・後期で異なるマッサージの注意点
妊娠中の体は、時期によって状態が大きく変化します。
そのため、マッサージを行う際の注意点も妊娠週数に応じて変わってきます。
特に、まだ胎盤が不安定な初期、体調が安定してくる中期、お腹が大きくなり体に負担がかかる後期では、それぞれ異なる配慮が必要です。
ここでは、妊婦さんが安全にケアを行うための時期別のポイントを解説します。
妊娠初期(〜15週):特に注意が必要な理由と基本の過ごし方
妊娠初期は、胎盤がまだ完成しておらず、赤ちゃんの器官が形成される非常にデリケートな時期です。
流産のリスクも他の時期に比べて高いため、マッサージによる外部からの刺激は原則として避けるべきです。
この時期にマッサージを断るサロンが多いのも、安全を最優先に考えているためです。
つわりなどで体調が優れないことも多いため、無理に体を動かしたりせず、心身ともに安静に過ごすことが最も重要です。
妊娠中期(16〜27週):安定期でも油断できないセルフケアのポイント
一般的に「安定期」と呼ばれる妊娠中期は、つわりが落ち着き、体調も安定してくる方が多い時期です。
そのため、医師や助産師に相談した上で、軽いマッサージを取り入れることは可能です。
ただし、安定期であっても禁忌とされる部位(お腹、腰への強い刺激、特定のツボ)への刺激は引き続き避けなければなりません。
セルフケアを行う際は、あくまで優しくなでる、さする程度に留め、少しでもお腹の張りや不調を感じたらすぐに中止しましょう。
妊娠後期(28週〜):大きなお腹に配慮した安全な姿勢とケア方法
妊娠後期になるとお腹が急激に大きくなり、腰痛や足のむくみ、こむら返りなどのマイナートラブルが悪化しやすくなります。
この時期のマッサージで最も注意すべきなのは姿勢です。
仰向けの姿勢は、大きくなった子宮が背中側にある太い血管を圧迫し、血圧低下や気分の悪さを引き起こす仰臥位低血圧症候群を招く恐れがあります。
マッサージを受ける際は、体の左側を下にしたシムスの体位や、クッションなどでもたれかかる座位など、お腹に負担のかからない楽な姿勢で行うことが不可欠です。
知らずに禁忌の場所を押してしまった…不安な時の対処法
妊娠中に避けるべきツボや場所があることを知らずに、つい強く押してしまった、という経験から不安に駆られて検索する方もいるかもしれません。
しかし、一度や二度、軽く触れた程度で直ちに深刻な影響が出ることは稀です。
まずは冷静に状況を判断し、ご自身の体の変化を観察することが大切です。
まずは慌てずに自身の体調変化を注意深く観察する
マッサージが禁忌とされる場所に触れてしまった場合は、まずは落ち着いてください。
禁忌とされる状態によっては、軽い刺激であっても症状悪化につながる可能性があるため、無理な自己判断はせず、まずは安静にすることが重要です。
お腹の張り具合、痛み、出血の有無など、普段と違う体の変化がないかを注意深く観察し、異変を感じる場合は速やかに医療機関を受診してください。
このような症状が出たらすぐに産婦人科へ相談を
もし、マッサージの後に以下のような症状が現れた場合は、自己判断せず、速やかにかかりつけの産婦人科に連絡して指示を仰ぎましょう。
・持続するお腹の強い張りや痛み
・規則的な痛み(陣痛のような痛み)
・性器からの出血(少量でも)
・破水(水っぽいおりもの)
・胎動が急に感じられなくなった
これらのサインは、切迫早産など緊急を要する状態の可能性も考えられるため、すぐに専門家の診察を受けることが重要です。
【専門家直伝】自宅でできる!症状別の安全なセルフマッサージ
禁忌部位を避けさえすれば、妊娠中の不快な症状を和らげるために自宅でできる安全なケアもあります。
プロの施術を定期的に受けるのが難しい妊婦さんでも、パートナーに手伝ってもらったり、自分で行ったりできる簡単なマッサージを知っておくと安心です。
ここでは、特に悩む方が多い症状別に、専門家が推奨する安全なセルフケア方法を紹介します。
足のむくみを和らげるふくらはぎの優しいケア方法
妊娠後期に特に気になる足のむくみには、ふくらはぎへのアプローチが効果的です。
椅子に座るか、横向きに寝た楽な姿勢で行います。
禁忌のツボがある足首周りは避け、ふくらはぎ全体を手のひらで包み込むように持ち、足首側から膝の裏に向かって優しくなで上げましょう。
オイルやクリームを使うと滑りが良くなり、肌への負担も軽減できます。
あくまで血流を促すイメージで、強い力で揉まないことがポイントです。
肩こりを楽にする首から肩甲骨にかけてのなでるようなケア
お腹が大きくなるにつれて姿勢が変化し、肩や首が凝りやすくなります。
この場合、禁忌のツボである肩井を強く押すのは避け、その周辺を優しくケアします。
パートナーに手伝ってもらえるなら、横向きに寝て、首の付け根から肩甲骨、背中にかけて、手のひら全体でゆっくりと円を描くようになでてもらいましょう。
自分で行う場合は、凝りが気になる側の腕を反対の手で支え、首から肩にかけて優しくさする方法が安全です。
腰痛を軽減するためにお尻の筋肉を優しくほぐす方法
腰痛がつらい場合、腰そのものを直接マッサージするのはリスクが伴います。
代わりにお尻の筋肉をほぐすことで、腰への負担が軽減されることがあります。
横向きに寝て膝を軽く曲げた姿勢になり、お尻の横に硬式テニスボールなどを当てて、自重で優しく圧をかけます。
ゴリゴリと強く動かすのではなく、気持ち良いと感じる程度の圧で数十秒キープするだけで十分です。
仙骨周辺は避けて行いましょう。
プロに任せる時の注意点!マタニティマッサージ店の正しい選び方
セルフケアでは物足りない、専門家に体を任せてリラックスしたいという場合は、マタニティマッサージを専門的に行っているサロンや治療院を選ぶことが不可欠です。
しかし、すべての店が妊婦さんに関する十分な知識と技術を持っているわけではありません。
ここでは、妊婦さんが安心して施術を受けられる店を見極めるための3つのポイントを紹介します。
妊婦さんへの施術実績が豊富かウェブサイトで確認する
まず、その店が妊婦さんへの施術をどのくらい行っているかを確認しましょう。
ウェブサイトに「マタニティコース」があるのはもちろんのこと、具体的な施術実績や利用者からの声が掲載されていると信頼性が高まります。
例えば、住吉鍼灸院アネックスのように「妊産婦施術実績10万人以上」といった具体的な数字を公表している院は、豊富な経験と知識に基づいた安全な施術が期待できます。
国家資格を持つスタッフが在籍しているかチェックする
体の構造や機能について専門的な知識を持つスタッフがいるかどうかも重要な判断基準です。
「鍼灸師」や「あん摩マッサージ指圧師」といった国家資格保有者は、解剖学や生理学を深く学んでおり、妊娠中の体の変化やリスクについて正しく理解しています。
無資格者によるリラクゼーションサロンではなく、体の専門家が在籍する治療院を選ぶことで、より安全性が高まります。
事前のカウンセリングで体調を丁寧にヒアリングしてくれるか
信頼できる店は、施術前のカウンセリングを非常に重視します。
妊娠週数、現在の体調、過去の妊娠歴、医師から何か注意されていることはないかなど、多岐にわたる項目を丁寧にヒアリングしてくれるはずです。
その日の体調に合わせて施術内容を調整してくれるなど、一人ひとりに寄り添った対応をしてくれるかどうかは、安心して体を任せられるかの大きな判断材料となります。
妊娠中の不調の根本原因は「冷え」と「自律神経の乱れ」にある
つらい肩こりや腰痛、むくみなどの症状をマッサージで一時的に和らげても、すぐにぶり返してしまう、という経験はありませんか。
その不調の根本的な原因は、実は筋肉の凝りだけではなく、妊娠によるホルモンバランスの変化に伴う「冷え」や「自律神経の乱れ」に隠されていることが多いのです。
この根本原因にアプローチしない限り、本当の意味での体調改善は難しいかもしれません。
多くの妊婦さんが見落とす身体のサイン
多くの妊婦さんは、腰痛や肩こりといった分かりやすい症状に意識が向きがちですが、その裏には体からの重要なサインが隠れていることがあります。
例えば、手足の先が常に冷たい、夜中に何度も目が覚める、寝つきが悪い、気分が落ち込みやすいといった症状は、自律神経のバランスが乱れているサインです。
これらはストレスや疲労が蓄積し、体を緊張状態にさせていることが原因で起こります。
なぜマッサージだけでは不調が繰り返されるのか
マッサージは、硬くなった筋肉をほぐし、血行を促進する対症療法としては非常に有効です。
しかし、不調の根本原因が自律神経の乱れにある場合、その場しのぎにしかならないことがあります。
理由は、自律神経が乱れて体が常に緊張状態にあると、マッサージで一度ほぐしてもすぐにまた筋肉が硬直してしまうからです。
不調を繰り返さないためには、筋肉へのアプローチと同時に、自律神経のバランスを整え、心身ともにリラックスできる状態を作ることが不可欠です。
鍼灸などを組み合わせ、体の内側から整えるアプローチが効果的なのはこのためです。
妊娠中のマッサージで気になる疑問や不安を解消
妊娠中のマッサージに関しては、多くの妊婦さんが様々な疑問や不安を抱えています。
ここでは、特に多く寄せられる質問について、簡潔にお答えします。
妊娠中にマッサージをしてはいけない場所は具体的にどこですか?
お腹周りへの直接的な圧迫、腰やお尻への強すぎる刺激は避けてください。
また、子宮収縮を促す可能性があるツボとして、足の内くるぶしから指4本上にある「三陰交」、手の甲の親指と人差し指の付け根にある「合谷」、首と肩の付け根にある「肩井」への強い刺激は禁忌です。
妊娠初期に腰をマッサージしても大丈夫でしょうか?
妊娠初期は胎盤が不安定で流産のリスクが比較的高いため、自己判断で腰をマッサージするのは避けるべきです。
腰痛がある場合でも、温めたり、クッションでサポートしたりする程度に留めましょう。
専門家による施術を受ける場合も、必ず妊娠初期であることを伝え、医師の許可を得てからにしてください。
妊娠中にマッサージ機やマッサージチェアを使っても問題ないですか?
マッサージ機やマッサージチェアは、振動や圧迫が禁忌部位を意図せず刺激してしまう可能性があるため、使用は控えるのが安全です。
特に、腰やお尻、ふくらはぎなどを広範囲に刺激するタイプのものは注意が必要です。
使用したい場合は、必ず事前にかかりつけの産婦人科医に相談し、許可を得るようにしましょう。
まとめ
妊娠中のマッサージは、正しい知識を持って行えば、多くの不快な症状を和らげる有効な手段となり得ます。
最も重要なのは、お腹周りや腰への強い刺激、そして「三陰交」「合谷」「肩井」などの特定のツボへの刺激を避けることです。
セルフケアは優しくなでる程度に留め、プロの施術を受ける際は、妊婦さんへの施術実績が豊富で、国家資格を持つ専門家が在籍する信頼できる施設を選びましょう。
もし誤って禁忌部位を押してしまっても、慌てず体調を観察し、異変があれば速やかに産婦人科へ相談してください。
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松本 悠花 【資格】 【経歴】 【SNS】この記事の監修者

住吉鍼灸院アネックス 院長
2007年に鍼師・灸師の資格を取得。
地元の鍼灸院で妊活サポート、介護リハビリ、訪問鍼灸などの臨床経験を積んだ後、2012年に株式会社ブレイシングへ入社。
2016年より大島はり灸院でマタニティケアに従事し、副院長・院長を歴任。
2022年10月に住吉鍼灸院アネックスを開院し、現在は妊娠中の不調、逆子、産後ケアを中心に対応している。マタニティ領域では2万件以上の症例を担当。
はり師、きゅう師、とこちゃんベルトアドバイザー
2007年 国際メディカルテクノロジー専門学校卒業
2007年 地元の鍼灸院にて妊活、介護リハビリ、訪問鍼灸に従事
2012年 株式会社ブレイシング入社
2016年 大島はり灸院にてマタニティケアに従事
2022年10月 住吉鍼灸院アネックス開院・院長就任
インスタグラム:https://www.instagram.com/sumiyoshishinkyuin_anx/











